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職業選択の心がまえ ~経済評論家・ 山崎元の転職原論

2011 - 09/27 [Tue] - 19:28

japan.internet.com 9月27日(火)10時1分配信
● 就職に失敗はつきもの

多くの企業で新入社員の相当数が入社から短期間の間に辞めてしまう。景気がまだ拡大中だった2006年に出版されて話題となった『若者はなぜ3年で辞めるのか? 年功序列が奪う日本の未来』(城繁幸、光文社新書)では、大卒の新入社員の約3分の1が3年以内に会社を辞めるというデータが紹介された。

城氏は、日本の会社では年長者が重要なポジションや仕事をなかなか譲らないので、若者に閉塞感があることを指摘した。筆者はこの意見に共感したのだが、他方で、「就職は(転職も含めて)概ね3分の1くらいは失敗するのではないか」という仮説が頭に浮かんだ。

最初の就職について、高名な経営コンサルタント故 P・F・ドラッカー氏は「最初の就職はクジ引きのようなものだ」と述べたことがある。学生がいくら企業を調べても、仕事のリアリティが分からないし、インターン・シップなどで企業を経験しても、「お客さん」としての経験に過ぎない。仕事というものは、実際にやってみるのと、外からイメージするのとでは、かなり違った感じのするものだ。

筆者は、これまでに12回転職を経験した。つまり、13回会社に就職したことになるが、そのうち4回は何らかの見込み違いで、就職としては「失敗」だったように思う。筆者の場合、就職も転職も自分の意思で決めたから、自分が入りたいと思った会社に入っている筈なのだが、仕事が合わない、会社が合わない、人が合わない、要は自分にとってこの会社で働くことがプラスにならない、という結論を得て、「失敗」の会社から転職した。

会社というものは、つくづく入ってみなければ分からないものだ。その原因は主に、(A)個々の仕事というものの実感が働いてみないと分からないこと、(B)個々の会社・職場の人間との相性があること、(C)自分自身に変化があること、の三点だ。

仮に、読者が、現在お勤めの会社を辞めたいと思っておられるとしても、それは、珍しいことでも、おかしいことでもない。就職や転職に関して「見込み違い」は、三回に一回程度は(たぶん)起こる普通のことだし、現在の勤務先を辞めたいと思うのは自分が成長したからかも知れない。

● 「石の上にも三年」は無用のアドバイス

会社を辞めたいと思って、誰か人生の先輩に相談すると、かなりの確率で「『石の上にも三年』という言葉があるくらいだから、もう少し我慢しろ」と言われるだろう。あるいは、「短期間で辞めると、我慢が出来ない人間だと思われて、今後の評価が下がる」などと脅かされる場合もある。

辛抱が大事な場合もあるし、短期間在職での(特に筆者のような何度にもわたる)転職が人材の評価を下げる場合もある。しかし、必ずしも長くない人生にあって、我慢を見せることを目的として、たとえば三年も時間を費やすとすると、それは、あまりにも大きな時間の無駄だと筆者は思う。

可能性を感ずることが出来て、総合的に見て現在の職場よりもいいと思える転職先を確保することができたなら、「石の上にも三年」を理由に転職を躊躇する理由はない。但し、いきなり会社を辞めてしまって、無職になってから次の職を探すのはリスクが大きいし、別種の大きな時間の無駄なので、やらないほうがいい。

また、年長者が就職する若者によく言う「好きな仕事をしろ」というアドバイスにも気をつけたい。やってみないうちから「好きな仕事」など分かるはずがない。これは、現実の男(女)を知らない人に「理想の相手と結婚しなさい」というくらいの無理な話なのだ。「好きな仕事が分からない自分はダメな人間だ・・・」と自分を責めるのは止めておこう。

ちなみに、楽しいとか、自慢になる、という仕事でなくても、自分にとって何らかのやり甲斐があって、その仕事を取り上げられたら困るという仕事は「好きな仕事」に近いし、少なくとも「向いている仕事」だ。

● 仕事のやり甲斐の要素は二つ

仕事の「やり甲斐」というものが何なのかはなかなか説明しにくいが、(A)自分の仕事が誰かのためになっていることが実感できるか、または、(B)自分の仕事が以前よりも成長していることが実感できるか、の二つの要素に分解できる。

お客さんでも、同僚でも、自分の仕事が役立っているという実感があると仕事にやり甲斐がある。もちろん、相手から何らかの感謝の気持ちが伝わってくれば素晴らしい。また、同じ仕事をしていても、たとえば、1年前、2年前よりも自分がその仕事についてよく理解してよりよい仕事をしているという自分の成長が自分で分かるなら、これも仕事の張り合いになる。

もちろん(A)と(B)の両方があるにこしたことはない。経験的にいって、ある職場にいて、(A)か(B)かどちらかがあれば、その状況は我慢が利く。しかし、(A)も(B)もないという状況では、その仕事に対して精神的な張りを保つのが難しい。生活のための条件や、キャリアプラン全体を考えなければならないが、転職を考える大きなきっかけだと思う。

● 就職・転職の失敗はリカバリーが利く

就職や転職に「完璧」は望めない。どうしても失敗はあるし、失敗することもあるという前提で物事を考えなければならない。

だが、幸い、就職や転職の失敗はリカバリーが利く。失敗は潔く認める方がいいし(何でもポジティブ・シンキングでごまかすのは却って非生産的だ)、少なくとも、時間は損をしている。しかし、仕事も人生も、一つの失敗で全てが決まってしまうほど単純には出来ていないし、取り返しが利く場合が多い。

簡単に言うと、就職で失敗したら転職すればいい。転職で失敗しても、また転職すればいい。幸い、健康で、働く気持ちが十分にあるのなら、チャンスはまたある。

【筆者紹介】
山崎 元(やまざき はじめ):経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員。58年北海道生まれ。81年東京大学経済学部卒。三菱商事、野村投信、住友信託銀行、メリルリンチ証券、山一證券、UFJ総研など12社を経て、現在、楽天証券経済研究所客員研究員、マイベンチマーク代表取締役。

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